もし[X]と一緒なら
「あー、だりー。次の授業アタシの苦手な理科だよ……。
くっそー。部活でロック歌って発散したいぜ……。早く放課後になんねーかな……」
廊下を歩きながらブツブツ呟いている少女は小美浪あすみ。
一ノ瀬学園に通う学生だ。彼女は医学部を目指しているのだが、理科の成績が
致命的なのだ。
そんなことを呟きながら理科室へ向かっている時、誰かに声をかけられた。
「あ、小美浪さん。次の授業は移動教室ですか?」
「お、誰かと思えば唯我か。おう、実は理科でな……」
げんなりしているあすみを見て、成幸は何かを察したような目つきをした。
「そうか、小美浪さん、理科苦手でしたよね。俺で良ければ放課後、ファミレスとかで
教えてもいいですよ?」
「え……マジか!? でも、それじゃお前に迷惑なんじゃ……」
「そんなことないですよ。俺も理科は得意じゃないんで、自分のためでも
ありますから……」
「そうか……じゃあ、お言葉に甘えてよろしく頼むな」
「はい。じゃあまた放課後。俺、職員室に用があるんで」
「ああ、またな」
(言うようになったじゃねーか、唯我のくせに……)
出会った当初は机に噛り付くように勉強している奴、くらいの認識しかなかった。
でも今は、かなり頼もしくなったとあすみは感じていた。
(そろそろ下の名前で呼んでみるかな……ひひっ、唯我の奴どんな顔するかな……)
悪戯っぽい笑みを浮かべ、あすみは少し前とは打って変わって軽い足取りで
理科室へ歩きだしたのだった。
~完~