懐古的な思い出を香りに込めて(ピピピホワイトデー/ラキアコ)
今日は3月14日。ホワイトデーの日はラッキーの通っている音高は
女子がソワソワしていた。
ラッキーはと言うと、レイジロウに彼の好きな焼肉を食べて貰おうとクール便で
肉をイタリアへ送ってから登校してきた。
そんな彼の手には小さな包みが握られている。それはバレンタインにチョコをくれた
古須亜子への贈り物だ。女の子に何をあげたらいいか悩んだが、結果的にアロマを
選び(店には女性客が多く入り辛かったが)、ラッピングをして貰って準備は万端。
後は亜子を探して渡すだけだ。
彼女を探してウロウロしていたら、いつもの木陰で本を読んでいる亜子を見かけた。
「あ、居た。おーい、フルスさーん!」
「園田くん……何か用?」
「いや、今日ホワイトデーだろ? だから……ほらこれ、バレンタインのお返し」
そう言ってラッキーは包みを渡した。亜子は顔を赤らめながら受け取ってくれた。
「開けてもいい……?」
「勿論。喜んでくれるかどうかは分からないけど……」
そう言うと亜子は包みを丁寧に開けた。
中からラッキーが選んだアロマが出てきた。亜子はパッと顔を輝かせた。
(良かった、喜んでもらえた……)
ラッキーはとりあえずホッと一息ついた。
亜子は嬉しそうにアロマを見つめて、ラッキーに向かってこう言った。
「ありがとう、園田くん。今度オムライスを食べに行こうね。奢るから」
「えっ……いいの?」
「うん。アロマのお礼したいから……ダメ?」
「いや、フルスさんが良いならお言葉に甘えようかな」
「うん、じゃあ次の日曜10時に駅で待ち合わせね」
「分かった。楽しみにしてるよ」
そう言って二人は次の聴音の授業の教室へ向かって歩き出した。