水色の希望は時に[X]になる
明けましておめでとうございます、唯我水希です。
今日は家族でお父さんのお墓参りに行った後、お兄ちゃんと二人で初詣に行く予定です。
「水希、準備出来たか? そろそろ出かけるぞー」
「待ってお兄ちゃん、あと少しだから! 女の子は支度に時間がかかるものなの!
文乃さんにも言われたでしょ? 女心練習問題だよ!」
「うっ……古橋の名前を出されると何も言い返せん……」
古橋文乃は成幸の女心練習問題の師匠である。
彼女は成幸が女心を分かっていないと指摘し、的確なアドバイスをくれる。
時々毒舌も混じるが、彼女は成幸の親友でもある。最初は名前も覚えてくれなかったが、その時からすると立派な進歩だ。
「お待たせー! 準備出来たから行くよ!」
「お、おう。……あれ? 何か水希、いつもと雰囲気が違うな……。
……あ、ちょっと化粧してないか? 何となくだけどちょっといい香りが……」
「えへへ、分かった? 初詣だしやっぱりちょっとお洒落しようと思って……。
似合う?」
水希はそう言ってクルクルと回ってみせた。
成幸はいつもと違って大人っぽい水希の姿に、思わず目を逸らした。
「ちょっとお兄ちゃん! 何で目を逸らすのよ!?」
「い、いや別に……ちょっと、我が妹ながら可愛いな、と思って……」
水希はその言葉に、真っ赤になってしまった。
(もう、お兄ちゃんの女たらし……! スマホ電話帳もも女の子のアドレスばっかりだったし、どこまで女の子が好きなのよ!?)
そう心の中でぼやきながら、水希は家の鍵を閉め、成幸とともに家を出た。