爆発と炎のロンド(轟焦凍誕生祭2022)

「よぉ、轟。今時間あるか?」

「爆豪……ああ、今は空いてるが、どうかしたか?」

「この前デクが言ってただろ? 新しく出来たカフェの料理が美味いってよ。

だから、お前さえ良ければ一緒に行かねーかな、と思ったんだけど、どうだ?」

 

『かっちゃん、轟くん。見てこの記事! まだオープンしたばかりなんだけど、

パンケーキが凄く美味しいって評判なんだよ。今度休みに行こうよ!』

 

デクが持ってきたのは新聞の切り抜きだった。

ヒーロー科の授業が終わるといつも一緒に行動しているデクと爆豪と轟は、

よくつるんで美味しいと評判の店に行っているのだ。

普段はそれぞれの好きな店に行くことが多いが、今日爆豪が轟を誘ったのは今日が轟の

誕生日だからだ。

緑谷は期末試験で赤点を取ってしまい、残念ながら不参加なので、爆豪は仕方なく

二人で行くことにしたのだ。

 

「じゃ、早速行こうぜ。10時開店だから今から行けば間に合うだろ?」

「そうだな。じゃあ行くか」

 

そして二人は目的のカフェに向けて歩き出した。

歩くこと15分、二人は緑谷が持ってきた切り抜きの店に入り、通された席でオムライスと蕎麦を頼み、待っている間他愛ない話をしていた。

 

「この前姉ちゃんが俺に言ったんだけどよ、『アンタもそろそろ彼女とか見つけなさいよ』とか言うんだよ。うるせーの何のって……」

「俺は親父から何も言われないな。『お前の好きなようにしろ』って感じだからな」

「お前はいいよな、自由な家風でよ。俺もそんな風に自由に生きてみてーよ」

「自由過ぎるのも考えものだぞ。決まりが無いから兄貴はヴィラン側に行っちまった

わけだからな」

「……悪い」

 

轟の兄は焦凍の才能に嫉妬し敵であるヴィランに堕ちてしまったので、爆豪は悪いことを聞いたと反省して短く謝った。

 

「気にしないでくれ。そういう意味で言ったんじゃないからな」

「でもよ……お前、兄貴があんなんになってよく雄英に居られるな」

「だからこそだろう? 俺はいつか立派なヒーローになって兄貴のような人を

出さない世の中に変えてみせるんだよ」

「………」

 

その轟の瞳には爆豪が今まで見たことのない光が宿っていた。

いつも無表情で何を考えているのか分からない轟の本心が垣間見えた気がした。